東海地方の最難関大学である、名古屋大学。
東大や京大と並んで「旧帝大」の一つです。
今回は、名古屋大学の国語の現代文を解答例と合わせて解説します!
実際の問題については、
赤本や、パスナビや東進予備校の過去問データベースでご覧ください!
(名古屋大学のHPにも載っていますが、著作権の関係で本文が載っていません。)
名古屋大学の現代文の難易度
難易度は高くありません。
文章のテーマも、近年話題になっている「食肉」についてです。
具体的なテーマなのでイメージしやすく、読みやすい文章です。
問題構成は記述中心となっており、
文字数も40字、50字、90字、120字があります。
聞かれていることは難しくないですが、
文字数が多い分ポイントをいくつか抑えないと文量が少なくなってしまいます。
記述問題の演習量がカギを握るでしょう。
ただ、逆を言うと、正しく読む力を身に着け、
それに倣って問題演習を多く積んだ受験生にとっては得点源になる科目です。
今回の解説では、
ナセバの教室長である私が解答を作る際の考えのプロセスを載せています。
考えをできる限り言語化したつもりです。
「こんな感じで現代文って解くのか」と参考にしていただければ幸いです。
それでは、始めていきましょう!
名古屋大学 2024年度 国語 現代文の解説
第1問
漢字問題なので飛ばします。
聞きなじみがない言葉は少ないので、
普段から読み書きを覚えていない漢字を調べる習慣がある受験生にとっては満点はコンスタントにとれるでしょう。
第2問
「動物の肉を食べること」について、どのような問題が指摘されているのかを40字以内で答える問題です。
<解答例>
温暖化などの環境負荷が大きいことと、自分と同じほ乳類を食べることの倫理的な問題。(40字)
<解説>
傍線部①の直後に、
「食肉の問題のひとつは温暖化などの環境負荷が大きいことだと言われています。」
と書かれています。
その後の
「たとえば100gのタンパク質を生産するのに~温室効果をもたらしているとされています」
までは環境負荷の具体例です。
具体例は論を分かりやすくしているだけなので、
説明する記述問題の解答には入れないようにしましょう。
また、「ひとつは」と本文に書いてあるので、複数あることが読み取れます。
そう考えて本文を読むと、
少し後に
「さらに食肉には倫理的な問題があると指摘されています」
とあります。
上記のポイントを押さえて解答を作成すると、
「環境負荷と倫理的な問題がある」
というのがベースになりますが、これだけだと当然字数が足りないので、
「どんな環境負荷か」ということと、「どんな倫理的な問題か」を解答に盛り込みます。
「倫理的な問題」については、
直後に
「私たちと同じほ乳類であり、ある程度の知能をもったウシやブタを殺して食べることが許されるのかという問題です」
とあるので、解答は「自分と同じほ乳類を食べるという倫理的な問題」とします。
「環境負荷」については、「温暖化などの環境負荷」とします。
こうすると、文字数がちょうど良くなるので、これで解答例を作ります。
第3問
筆者が、「少し不思議」と述べる理由を50字以内で答える問題です。
<解答例>
人間への共感能力は人間の生存に貢献してきたが、他の生物への共感は人間の生存には貢献していないから。(50字)
<解説>
傍線部に、
「この人間のやさしさの拡張傾向」とあります。
傍線部に指示語がある場合は、その内容を必ず確認しましょう。
今回指示している内容は、傍線部直前にある、
「私たちは少しずつ、他の動物へも共感の範囲を広げているように思えます」
です。
もっと言うと、さらに前に書いてある、
「したがって、人を殺すということには大きな抵抗感を持つようになることは当然です。そしてこの抵抗感は、人間以外の人間とよく似た生物、たとえばほ乳類などであれば(人間ほどではないにせよ)適用されてしまうのです」
の部分です。
これは、同じことを言葉を変えて繰り返し述べることで、
主張を強調する表現技法です。
現代文は、こういった、
同じことを言っている部分を探すことも非常に大事な読み方です。
その抵抗感が、「やさしさの由来」を考えると少し不思議らしいのですが、
「やさしさの由来」というものが具体的にどういうことを言っているのかがわかりません。
そこで、傍線部の直後を読むと、
「もともと人間が持っている共感能力は他人との協力を可能にしたことで人間の生存に貢献し、強化されてきたものです」
とあります。
「もともと」という言葉をヒントに、これが「やさしさの由来」と考えられます。
ここまでをまとめると、
共感は、人間が生存するために貢献したものだけど、
それをほかの生物にまで広げるのって不思議だよね。
ということになります。
では、なぜ「不思議」なのでしょう?(コレが聞かれていること)
傍線部の次の段落に、
「他の生物に対する共感は特に人間の生存には貢献していないように思えます。」
とあります。
さらに同段落最後に、
「食料になりうる生物に共感してしまうことは『増えることに貢献する能力が強化される』という増えるものの原則に反しているように思えます。」
ともあります。
つまり、
人間はほかの生物に共感するけど、
それって人間が生存するにはしないほうが良いんじゃない?
ということです。
これが、「不思議」の内容です。
ここまでの内容を文字数に合うようにまとめると、
解答例のようになります。
この問題は解答の要素が多いので、
指定された文字数にするために解答を削ることに苦労しました。
第4問
どういった点から「大成功」なのかを90字以内で答える問題です。
<解答例>
他人との共感により、協力することができるようになり、分業が成立したため食料生産と分配を効率化でき、過去のどの生物にもありえなかった、栄養が余った状態を生み出したという点。(86字)
<解説>
傍線部のある「大成功」に「このように」がかかっているので、
この指示語の内容を考えると、傍線部直前の段落の内容になります。
つまり、「大成功」とは、
「栄養が余っている状況」のことを指します。
あとは、文字数に当てはまるように、
「なぜ栄養が余っている状態が大成功なのか」を考えます。
「過去のどの時代においても、生物は必要な食料のために競争」をし、
「栄養が得られればその分だけ増えてしまうので、常に栄養が足りていない状態」
になってしまうのに、
なぜ人間は栄養を余らせることができたのでしょうか?
それは、
「他人どうしで協力することができたからに他なりません」
と筆者は主張しています。
協力することで、「食料生産と分配を効率化できた」のです。
また、
「この協力体制を可能にしているのが、他人との共感です」
とも言っています。
ということで、解答のベースとしては、
他人との共感ができることで協力できるようになり、食料生産と分配を効率化して、
栄養が余っている状況になった。
となります。
あとは肉付けをして解答例のようになります。
第5問
生物としての人間のどのような傾向がどこまで進むと考えているかを120字以内で答える問題です。
<解答例>
他人に対してやさしくふるまう傾向が、人間以外の生物にも範囲が拡大され、全ての生物の命を平等に大切にした方が良いという考えに行きつき、無生物から食料を生み出し、ほかの生物の命を奪わなくとも生きていけるようになると考えられている。(113字)
<解説>
問題が、「どのような傾向が」「どこまで進むのか」と聞いているので、
その2点を考えていきます。
まず、「どのような傾向か」ということです。
傍線部直後に書かれていますが、
この「傾向」が進むと、筆者は
「100年以内にはほ乳類であるウシやブタを食料にするのは一般的ではなくなるような気がしています」
と述べています。
ここから考えると、ここでいう「傾向」とは
これは傍線部直前の段落で述べられている、
人間以外の生物(本文ではイヌやネコが具体例として挙げられています。)に対して強い共感能力が発揮されてしまう傾向
になります。
では、その傾向がどこまで進むと考えられているのか。
本文を読み進めていくと、
「ほ乳類を殺すことがなくなったら、きっとすぐに鳥類はいいのか?魚類はいいのか?昆虫、甲殻類、植物はなぜいいのか?という議論になるだろう」
「すべての生物の命を平等に大切にした方がいいという考えにすぐに行きつきます」
と書かれています。
さらに、科学技術の発展により、
「原理的には生物を使わなくてもタンパク質などの栄養を作ることができ」、
「増えるものを無生物からつくることがもうすぐできそうなところに来ています」
とあります。
そうすることで、
「人間はもうほかの生物の命を奪わなくても生きていけるようになります」
と筆者は述べています。
ここまでをまとめると、
人間以外の生物に対して共感する傾向が進むと、
最終的にはほかの生物の命を奪わなくても人間は生きていけるようになる
というのが解答のベースになります。
これに、肉付けをしていき、
解答例のようになります。
第6問
正しい選択肢を2つ選ぶ問題です。
<解答>
ア、オ
<解説>
苦戦する要素はあまりなく、本文を丁寧に読んだ人なら
時間をかけずにわかる問題です。
イ:「人口肉を食べなければならない」が誤り。
本文では、人間以外の生物に共感してしまうため、食肉することに抵抗を覚えるようになり、
その代わりに人口肉を用意することができると書いてあるため、
むしろ人間が人口肉を食べることを選択するといえる。
ウ:「環境への負荷を軽減することが急務となっている」が誤り。
ウシのゲップの例は出てきたが、解決が急務となっているとは書かれていない。
エ:「人間が共感することはありえない」が誤り。
人間が共感する範囲は昆虫まで広がるだろうと本文では書かれている。
カ:「ブッダの教えに反する」が誤り。
ブッダの例は出てきたが、そこからやさしさの拡張傾向が始まったとは書かれておらず、
あくまで無殺生の考えを説いた例として出てきているだけである。
最後に
ここまで読んでいただきありがとうございました!
名古屋大学の問題は非常に素直で良い問題です。
名古屋大学を志望していない受験生も、
練習の一環として解いても効果は期待できそうです。
・もっと詳しく対策を知りたい!
・自分が志望する大学の対策をしてほしい!
・自分の勉強があっているか知りたい!
などなど、気になることがあれば、
ぜひナセバにお問合せください!
皆さんが第一志望の大学に合格することを祈っております!